ナギ ナリコのENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

小粋な通俗喜劇、でもタイトルは…?@博品館劇場 鵜山仁演出 賀来千香子主演『しあわせの雨傘』

博品館劇場で賀来千香子さん主演しあわせの雨傘を初日に観てきました!

原作はフランスのブールヴァール劇(théâtre du boulevard)というフランスの通俗喜劇です。少し前にカトリーヌ・ドヌーブ主演で映画化されましたのでご存知の方もいるのでは。ツイでお先に呟いてこきましたが、軽快で軽妙で台詞もおしゃれで…と素敵な舞台でした。演出は文学座の鵜山仁さん。

 

 

公式あらすじ

とある町の、大きな傘工場の経営者夫人シュザンヌは、メイドもいる専業主婦。子育ても終わり、ポエムづくりとジョギングが日課。家事も仕事もしなくて良い、と夫に言われる“お飾りの妻”となっていました。しかし彼女は“お飾り”ではなく、素晴らしい実力を持った女性だったのです。
 シュザンヌは子育ても終わり、優雅な日々を送るが、退屈な日々を送っている社長夫人である。社会の中に自分の居場所はなく、家庭でも母としての位置は、愛されるママでしかない。
 夫のロベールは仕事最優先、シュザンヌの事など見向きもしない。彼は、秘書のナデージュを愛人にしていた。娘のジョエルは結婚し、夫を父の傘工場に勤めさせている。息子のローランは、会社の後継者になるつもりは全くなくパリ暮らし。しかし、びっくりするニュースを持って実家に帰ってきた。
 そんな時、独善的で典型的なブルジョア社長ロベールに反発する労働者が、横暴な経営を改善しろ、とストライキに入ってしまう。ロベールは、事態を収拾するどころか、悪化させ工場に軟禁状態になってしまう。
 この窮地をシュザンヌは、若い頃には交流のあった、今は共産党員の市長であるババンに、助けて貰おうと相談する。ババンの協力もあり、創業者の娘としてシュザンヌは組合との交渉に成功する。そして夫は軟禁から解放されるが心臓発作を起こしてしまう。夫のロベールに代わり、彼女シュザンヌが社長に就任するが・・・。

しあわせの雨傘 (字幕版)

※画像は映画版です

舞台『しあわせの雨傘』公式サイト | 主演 賀来千香子

 

舞台全体について

ピジョル一家のセットが組まれています。左手奥に階段、と右手奥に大きな窓があり、これらが左右対称のアーチで囲われています。右手の大きなガラス窓は「雨傘」の形。左手に暖炉があり、先代社長の胸像が置いてあり、その横にソファセット、右側にダイニングセット。「雨傘」「傘の柄」「小さな飾り傘」が部屋のあちこちにちりばめられています。このようにセットのあちこちに「傘のモチーフ」がちりばめられ、非常におしゃれで可愛らしい舞台美術。ストーリーは一介の主婦だったシェザンヌが、ストライキをキッカケに夫が経営する雨傘工場の社長に就任…!という女性のサクセスストーリー。そこにシェザンヌの過去のロマンス、家族に隠していた秘密…とエピソードが差し込まれます。

キャストについて

主役のシェザンヌ役、賀来千香子さん。もちろん以前から存じてました、素敵な女優さんですよね。まず、パッと登場した時の華がある。線はかなり細くて、舞台をやっていくならもう少しふっくらされた方がより素敵かな、と思いましたけれど、素のキャラクターの朗らかさ、明るさがそのままキャラクターの魅力に繋がっているようでした。映画のドヌーブはもっとグラマラスな女優さんだと思いますので、また印象が違ったシェザンヌだったのでは。初日だからか、少し緊張されていたのか、登場人物との気の置けない会話がこなれていなかったのと、意外と快活な女優さんなのでコケティッシュさが欲しいところ。一幕ラスト、そして二幕も、客席に向かって見栄を張る場面がありますが、体当たりで演じられていました。特に二幕は振り切った演じぶりで、頼もしい女社長ぶり。夫ロベール役の井上純一さんのコミカルな受け芝居は客席を爆笑の渦に誘いましたし、左翼政治家ババン役永島敏行さんの骨太で朴訥な存在感と好対照でした。あと、遠野なぎこさんが上手かったですね〜… !秘書ナデージュ役は意外と出番が少ないのですが、芝居声も明晰、ご自身の役回りをしっかり理解された演技で「ちゃっかりしたたかな秘書役」を好演。年齢やキャラを考えたら娘役でもいい位ですけれど、ハマっていました。娘ジョエル役広田礼美さん、息子ローラン役後田真欧さんは手堅い印象。ただ、娘は本来もう少し声も存在も押出のある女優さんの役かな、というのと、見た目はもっと綺麗に整えて欲しかったかな〜。髪色が初日なのに美しくなかったのが少し残念。(普段宝塚見慣れてる身としては、ね)

 

日本語版タイトル『しあわせの雨傘』への違和感

少し前にTwitterで#女性映画が日本に来るとこうなる、ってまとめが流行ったの、ご存知ですか?

togetter.com

観終わって気になったのは、「実は」この舞台、『しあわせの雨傘』ではないよね…いわゆるダサタイトルでは?ということ。原題は『Potiche』、華美な陶磁器の「飾り壺」のこと。台詞にもあるよう家庭の「飾り壺」、とされていた主婦が、雨傘工場の経営者となり、自分の居場所を見つけていく話なんですよ。演出(主に舞台美術)で「雨傘」を強調していますけれど、しあわせと雨傘はこの芝居では実はあんまり関係なくて、シェザンヌ自身が掴んだ結果に過ぎない。演出の鵜山さんもそのあたりの食い違いをわかっていたからこそ、今回のような舞台プランになったのだと思います。


しあわせの雨傘 <予告編>  2011/1/8公開!

映画版は未見ですが、こちらも確かに美術がおしゃれ、全体的な画面から受ける印象も可愛いです。ただ、映画になんでも「しあわせうんちゃら」ってタイトルをつけるのセンスない…って常々思っている人間なので、そこはモヤモヤ。もっと通俗的でシニカルな面もあるのかな、と。あ、これは完全余談ですが、劇中シュザンヌが詩作を趣味としている、という場面で何故か「俳句」という翻訳…そこはあらすじ紹介にもある「ポエム」でいいじゃん!と思いました。

以上のように翻訳タイトルの「食い違い」が舞台に微妙な「ズレ」を生んでいた印象。映画版が先である以上、タイトルを変える訳にはいかないのでしょうが、うーん難しいところですね…

 

全体的には気楽に気軽に観れた楽しい作品でした。でも翻訳もの、って色々難しいですね。映画版も近々見てみたいと思います!

以上、ナギナリコがお届けしました!(8月末の公演中にアップしたかったのに遅れてしまい反省です…)

 

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