ナギ ナリコのENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

宙組新トップコンビお披露目は少女漫画の「手堅いタカラヅカ化」@宝塚宙組『天(そら)は赤い河のほとり』

先日大千穐楽を迎えました宙組誕生20周年記念公演、かつ宙組新トップコンビ、真風涼帆と星風まどかの大劇場お披露目公演を、まずお芝居からレビューします!

ミュージカル・オリエント
『天(そら)は赤い河のほとり』
原作/篠原 千絵「天は赤い河のほとり」(小学館
脚本・演出/小柳 奈穂子

小学館発行の「少女コミック」にて1995年から2002年まで連載され、絶大な人気を誇った篠原千絵の「天は赤い河のほとり」を、宝塚歌劇でミュージカル化。
紀元前14世紀、古代オリエントヒッタイト帝国。優れた才能と血筋で世継ぎと目される第3皇子カイルは、呪術の形代としてタイムスリップさせられた現代の女子高生、鈴木夕梨(ユーリ)と出会う。彼女を召喚したのは、自分が産んだ皇子に皇位を継がすため、他の皇子を亡き者にしようと画策する皇妃(タワナアンナ)、ナキアであると知ったカイルは、ユーリの身を守るため側室として傍に置く。正義感に溢れ、現代的な感覚で物事を捉えるユーリは、次第に民衆の心を掴み、戦いの女神イシュタルとして崇拝されるようになる。そんなユーリをいつしか深く愛するようになっていたカイルは、彼女を正妃に迎え理想とする国創りに邁進したいと考え、ユーリもまたカイルと共に生きることを願う。だが、ユーリの帰還や強国ミタンニやエジプトとの対立、そしてナキアの陰謀など、二人の前に様々な障壁が立ちはだかっていた……。
古代オリエントを舞台に繰り広げられる、ロマンティックな歴史ファンタジーに、真風涼帆を中心とした新生宙組が挑みます。

宙組公演 『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

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全体について

幕開け、現代の遺跡発掘現場から始まります。

見つかった楔形文字の石版には古代ヒッタイトのタワナアンナ(皇妃)、ユーリ・イシュタルについてに記述が。幼馴染で今も行方不明の夕梨と同じ名の「ユーリ」に氷室聡と(ユーリの妹)詠美は思いを馳せます。それに重なる形で、下手セリからこの文章を刻んだ侍従キックリ(凛城きら)が登場、回想を綴りながら舞台上に次々と古代オリエントの登場人物達が現れます。

キャッチーな主題歌ゲームミュージックの作曲で有名な下村陽子さん作曲 Yoko Shimomura|下村陽子 (@midiplex) | Twitterにのって

これぞ宙組!な長身で、洗練されたヴィジュアルの登場人物達が次々登場!!

これだけでもうファンの心鷲掴みなオープニング!!

 少女まんがと宝塚の幸せな出会い、ふたたび。

天は赤い河のほとり(1) (フラワーコミックス)

全28巻に及ぶ長編少女まんがである原作を、宝塚のお約束、90分少々でまとめ上げるのはかなり難儀しただろうな…と思います。演出小柳奈緒子さんは、雪組ルパン三世』、花組はいからさんが通る』等、漫画をはじめ原作の2.5次元化、宝塚化に実績を残した演出家。他にもシェイクスピアチェーホフギリシア神話、日本映画、インド映画、落語等…かなりバラエティにとんだ、主に「原作」付き作品を担当することが多く、その興味や知識の幅の広さがうかがえます。

小柳先生はちょっとオタク趣味みたいなところがあって、これまでの宝塚では取り入れていなかったであろう「ロリータ」ファッションのヒロインを登場させたり等、ご自身のオリジナルではその傾向が顕著ですね。

今回の企画自体、小柳先生発かどうかは特に耳にしていないのですが、小柳先生=2.5次元モノみたいな方程式は劇団側も持っていますし、その実タカラヅカ発2.5次元舞台として、今回も成功している、と感じました。

小柳先生は興味の幅や元の趣味嗜好は「オタク的」ではありますけれど、演出的にそこまでキャッチーなものを取り入れたり、飛び道具的なものを使う方ではありません。宝塚の座付き作家の職人芸で見せてくれる人。

今回もそれは変わらず、数多くの登場人物を登場させ、長い長いストーリーを短時間に手堅くまとめて来たな、という印象。

 

演者について

この作品が大劇場お披露目の真風涼帆は、もう堂々としたトップスターぶり…!金髪に古代オリエント風な重層感がある衣装がとってもお似合い…!相手役の星風まどかちゃん、とっても可愛らしく、現代から古代にタイムスリップし、そこでの生活を経て、成長していく…けなげさで、初々しくも芯のしっかりしたヒロインをしっかりと演じられてました。

花組から宙組に組替え、芹香斗亜はエジプトの将軍、ウセル・ラムセス役。チャラ目な飄々とした役どころで、役柄の幅が広がり、魅力が増した印象。同期の愛月ひかるはヒッタイトに敵対するミタンニのマッティワザ役、長い長い黒髪をはじめヴィジュアル面での作りこみ等、原作の大ファンだと言う彼女のこだわりが随所に感じられました。役としても濃くて覚えが良いキャラですね。カイルの弟ザナンザ・桜木みなと、軍人蒼羽りく、和希そら、留依蒔世、瑠風輝、優希しおん、宙組新進男役達のマント姿もさすがキマってカッコ良い…!宙組では色濃い女役を任されることが多い純矢ちとせのナキアと、その侍従であり今作で卒業した専科星条海斗演じるウルヒもキーキャラクター。男役澄輝さやと(初女役!)の美貌の王妃ネフェルティティティも、適材適所でしたね。ユーリのお付き?お友だち?的な女の子たち(天彩峰里、夢白あや、花宮沙羅)や、宮廷の女たちもキュート!(鬘やアクセサリーも見所!若手で特に気になったのはティト役の愛海ひかる。非常に役として「オイシイ」、かつ、芝居心が必要な役で、詳細は避けますが、とてもけなげに、涙を誘う芝居っぷり、見事でした。

 

宝塚版「天河」の物語構造

様々な勢力との戦い、権謀術数があり(めっちゃ省略してますが)、最終的なクライマックスはカイルとユーリの皇帝、皇妃の戴冠式の場面、これが、最初の氷室聡と詠美のシーンに繋がっていく…左右に配された楔形文字の石版は、つまりはこの物語が過去の出来事であり、ある歴史を物語るものだと、悟らせる構造になっているのだと思います。

以上、網羅的な記述となりましたが、このように大勢の登場人物を出し、原作のエピソードはかなり大胆に削っている部分もありますが(これは大勢キャラクターを出すために仕方ない処遇)、全巻ラストまでまとめ持っていく、座付き作家の職人芸が冴えてました。要はこな作品「天河レジェンドたちのドリームキャストショー」なんですよね。多様な登場人物達を次々登場させ、個別のエピソードを織り込みながらエンディングへ向かう。

エピソードとして特に割を食ったのはマッティワザ、ラムセスあたりですけれど、それでも印象に残るキャラクターとして作ってあったと思います。ラムセス、キックリなんてかなり説明台詞も多いし大変だったでしょうが、役者が手堅く演じていたと感じました。(安心、安定の芹香斗亜、凛城きら)

 

一ファンの体感とこの作品の難点

しかし…実はこの作品、意外と少なくともSNS上、ネット上での評価が体感上、ヴィジュアル作り込みの評価だけに留まったのは、主に以下の理由からだと思います。

・登場人物の関係性がわかりにくい

・展開が速すぎる

更に個人的に気になったは

・小柳奈緒子さんがネタ切れ感凄い

・実は娘(女)役>男役 の印象が強い

・実は「天は赤い河」感が薄いのでは…?

 

多数のキャラクターの関係性を認識できるのか?

順に話しますと、まず、この物語で押さえて置かなければならないのは、基本的に「カイル+ユーリVSナキア(+ウルヒ)」の対立構造。それがラストに決着する、ということ。

ラムセス、ネフェルティティのいるエジプトは脅威ではあり、最終決戦はヒッタイト(カイル・ユーリ)VSエジプト(ラスセス)」構造になっていますが、これはエジプトがナキア側についているということ。対して敵対していたミタンニのマッティワザは、最初の戦いこそ敵ですが、最終的にヒッタイト側に付き、「カイル+ユーリ+マッティワザVSラムセスはじめとしたエジプト軍(裏にナキア、ウルヒ)」となっている。

この対立構造が、特に初見では難しかったのでは?と思います。

ラムセスやキックリの説明台詞でカバーしたりしていますが、そこを逃すと「あれ、愛ちゃんマッティワザいつ仲間になった?」となる。ラムセスはどういう立場?味方じゃないの?タトゥーキア=ネフェルティティだよね、みたいなことって、リピーターや原作ファンなら理解できますけれど、初見で何も知らずに見た観客に、どこまでわかったかどうか。

タカラヅカでは割と「登場人物相関図」が公演解説に事前にアップされるのが常ですけど、

公演解説 | 宙組公演 『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

皆がみんなそれをチェックしている訳ではないですよ~~?

 

演出家の萌え「時代と男に翻弄される哀しき女性たち」

更に、クライマックス間際での並びからも、ネフェルティティとナキア、つまりは時代や男性の都合に翻弄される女性達のシーンを入れている。これは小柳先生の美点でもあって、これまでの作品も娘(女)役の比重が結構大きいんですよね。娘役をないがしろに、男役の添え物にしがちな演出家もいますし(こっそり)。

哀しき少女~女性達のそれぞれの生き様、それ自体は良い。(余談ですが幼少期華妃まいあ→純矢ちとせラインが最初は違和感あり、この可愛らしい少女が何故こんな…?から、クライマックスに近づくと違和感がなくなっていく役作り、双方とっても良かったと思います)

ただ、原作のつくり上仕様がないかもしれませんが、ラムセスやマッティワザがエピソードで少し割りを食ったかな…感はありますね。あとクライマックスの決戦シーンの殺陣が(ダサい)…女性演出家の殺陣の演出はイマイチ、ってファンの間では実しやかにひっそり言われてますけど、今回もなぜこんなキャッチーでノリノリな曲をかけながら「すろーもーしょん…」と思ってしまいました。

 

 小柳奈緒子先生は少しお休みした方が…

そして更に個人的に気になったのは、小柳先生は最近かなり登板が多い演出家でして、「ネタ切れ」感が凄い。今回もある「仮面」「祭り」というのは確かに舞台上映える演出手法なんですけれど、近い舞台でもご自身が多用しており、「またか…」という感じが否めない。

舞台美術は帝劇の『王家の紋章』 帝国劇場 ミュージカル『王家の紋章』Crest of the Royal Familyにどこか似ているなあ…


『王家の紋章』2017PV【舞台映像Ver.】

と思ってたら、同じ二村周作さんが美術でした。

確かに近い時代で、古代オリエントが舞台、主人公の設定(現代から古代にタイムスリップした女の子)も似ている。でも、本来は「違う舞台」ですよね。

更に、肝心の「赤い河」がずっと書き割りの背景。たまにライティングを青や赤にしてみたり、左右の石版に川の流れのような(ですよね?)ひびを入れ、それをライトアップしたりしているのですが、この舞台の「河感」はいずこへ…という印象。風や大地(=遺跡)の印象がありますが、そもそも壮大なスケール感が感じられるような、そうでもないような…どこかで見たような既視感のある舞台になっている。主題歌が現代的でキャッチーなんだから、映像使う等新しい演出は出来なかったのかな、と(予算と納期の関係あるかもですが)お忙しいのはファンとして(事情が)わかる(次にはすぐ星組の台湾公演)のです。

が、どうにも、わがままなファンとして、「これまで見たことなかったもの」「これまで以上のもの」を作り手には要求しますので、そのあたり物足りなかったのです。

繰り返しますが、全体としては手堅いまとめなんですよ、この舞台。宝塚歌劇の長編原作付舞台のつくりとしては割とお手本フォーマットのような作りです。本来は一本ものにしてもいい位の長編大作ですからね。

ただね…というワガママなファンのつぶやき(長過ぎる)でした。

 

とっても長くなったので、ショー、宙組誕生20周年記念公演ロマンティック・レビュー「シトラスの風-Sunrise-」については次回に続きます。

あともっと出演者の萌え語りしたい…!なあって。とにかくまだまだ続きます~!

ナギナリコでした!

追:『シトラスの風』についてもアップしました!

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