ナギ ナリコのENTREVUE BLOG

「ナギ」ですが時にはあらぶり「エンタメ」「すきなこと」について書く。演劇・宝塚・映画・本、アート・旅行等娯楽、趣味の話とたまにの真面目コラム。

ベテラン演出家によるタカラヅカ的現代劇@宝塚月組『カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-』

今回は先日大熱狂のうちに閉幕した月組公演より、お芝居『カンパニー』のレビューをお届けします。初日とLVの感想は既にアップしております。

nagi-narico.hatenablog.com

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 ミュージカル・プレイ
カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-
~原作 伊吹 有喜『カンパニー』(新潮社刊)~
脚本・演出/石田 昌也

2017年5月に新潮社から発行された伊吹有喜の小説『カンパニー』を舞台化。愛妻を亡くし生きる意欲を失った製薬会社の青年サラリーマン青柳誠二が、社の協賛公演を行うバレエ団への出向を命じられ、世界的プリンシパル高野悠が踊る冠公演「新解釈版・白鳥の湖」を成功に導くため、一癖も二癖もあるダンサーや業界人に翻弄されながらも、バレエ団のバレリーナ高崎美波との淡い恋や新しい仲間たちとの友情を支えに、様々な困難を乗り越え奮闘する姿を描くハートウォーミングな成長譚。努力・情熱・仲間たち(レッスン・パッション・カンパニー)をテーマとし、個性豊かな登場人物たちがそれぞれに懸命に生きる姿を、新感覚のバック・ステージ・ミュージカルとしてお届け致します。

公演解説 | 月組公演 『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

 

異色かつ、挑戦的な意欲作

昨今の宝塚において、特に大劇場では、現代劇は少なめです。代表的なものは昨年の宙組公演 『王妃の館 -Château de la Reine-』(原作小説あり、田渕大輔作・演出)、一昨年の雪組公演 『私立探偵ケイレブ・ハント』(オリジナル、正塚晴彦作・演出)、更に前ですと壮一帆トップ時代の雪組公演 『Shall we ダンス?』(映画原作、小柳奈緒子作・演出)、更に遡ると今回と同じ石田昌也作・演出による『黎明(れいめい)の風』が思いつきます。

さて、そもそも現在の宝塚ではどうして現代劇の上演が少ないのか?

これはわたしの考えですが、現代劇の世界が「宝塚の夢夢しさ、華々しさ、虚構性に合わないから」、に尽きます。

石田先生の『黎明の風』などは正にそうで、「日本の戦後」という身近な、しかも「生々しい」時代を扱っている。『黎明の風』は映像で拝見しましたが、話自体はともかく、違和が残った。それは、やはり戦争を舞台とした様々な名舞台を観てきたからですし、宝塚っぽく美的に処理しているように思えたからです。今宝塚で現代劇を上演するとしたら、持ち味的にもベテランの石田昌也先生か、オリジナルで現代劇の執筆が多い正塚晴彦先生担当でしょう。さて小柳奈緒子先生の『Shall we ダンス?』のように、これまでは登場人物達を「日本人ではなくす」「日本以外が舞台の作品にする」というギミックを使い、物語の虚構性、「タカラヅカ」らしさを高めていました。

この流れが変わったのがおそらく田渕大輔作・演出の浅田次郎原作、宙組『王妃の館』でしょう。この芝居はかなりオリジナルの小説に手を入れていますが、要は現代劇に「タカラヅカ」的な要素を見出した作品。宝塚に馴染みの深いフランス、パリに主人公達は旅し、「王妃の館」にルイ14世(の亡霊)が登場する。現代劇(風)の衣装と、宝塚らしいコスチュームの衣装を着た登場人物が時空を超え登場する。違和感なくまとめていたと思います。

『カンパニー』の原作がどのような経緯で選出されたかはわかりませんが、基本的にはこの路線を踏襲していると思います。原作者、伊吹有喜さんは浅田次郎さんほど有名作家ではないでしょうし、『カンパニー』は一大ベストセラー小説でもない。出たばかりの本です。

カンパニー

それでもこの作品の「宝塚化」が踏み切られた理由の一つを想像するとしたら「バレエ」や「フラッシュモブ」といった宝塚の大人数でやる舞台だからこその見せ場を用意出来る作品だ、と判断されたからでしょう。

 

カンパニーは凡作か?佳作か?

『カンパニー』の出来に対する評価として、わたしは「よく作られている」と思いました。丁寧、とは言い難い部分もありますが、石田先生の苦心の跡が見えます。これは初日から何度かの観劇、ライブヴューイングを経てもあまり変わっていません。さすが、ベテラン演出家による作品、と感じる。主人公の青柳を中年の離婚経験者(でしたでしょうか、原作未読)から妻を亡くし気落ちしている壮年へ変更。高崎美波のキャラクターを膨らませ、ちょっとしたロマンスを加える。ここまでは宝塚あるある改変。そして大舞台で映える白鳥の湖を劇中劇として上演。ヒロインはあくまでオデットのアンダーの美波役、愛希れいかですので、美波がヒロイン、とわかるように紗良と高野に踊らせながらも、背景で美波も踊る。クライマックス、美波の晴れの舞台を見せられなかったのは残念でしたが、それまでの場面で青柳が美波やカンパニーと出会い成長していく様や、美波がオデットとして立派に踊っただろうことは、観客に想像させる作りになっています。見せたいところは見せている。時間の関係でやや苦しい作りになってはいますが、場面転換もスムーズですし、ベテラン演出家ならではの出来だと思いました。たぶんに勝手な解釈ですけど、青柳が歌う「カンパニー」の歌、最初はカンパニー=会社、みたいな印象が強く、会社組織以外にも敷島バレエ団もカンパニーと呼ばれると知り、仲間=カンパニーと実感し、希望を取り戻す流れなのかな、と。

ただ、この作品の歪みがあるとすれば、アイドル、もといパフォーマンス集団バーバリアンの扱いと、会社組織やバレエそのものについての描写の乱雑さ、でしょうか。

三番手月城かなと演じる水上那由多は、なかなか役作りが難しそうなキャラクター。特に、もう明日が楽、という時にリーダー阿久津と、紗良のパフォーマンスに難癖をつけ、リフトを提案する場面。それまで一貫性を持ち見た目に反し実は真面目キャラ、という造形がここで崩れかかるも、「パフォーマンスに誠実、一生懸命ゆえ」という役作りで押し切った印象を受けました。リーダー阿久津仁は更に難しかっただろう、と思います。今更何故それをここで?!という空気読めないキャラクターですから。でもこんな役でもどこか実直さを感じさせるのは、月城かなとと、この公演で卒業の宇月颯の持ち味、芝居心所以ですね。なぜ、左遷先がバレエ団のプロデューサー職?というところや、合併話、そもそもいくら那由多が体幹がしっかりしてようが、ジークフリードのソロは踊れるのか?アンドゥオールは?バレエは普通アンダーがどの公演もいますよね?というところもツッコミどころです。おそらく、もっと劇中劇『白鳥の湖』を、「新白鳥の湖」としてもっと大胆な衣装や演出変更をしていれば、この部分は補えたと思います。切り貼りしていますが、極めてオーソドックスな白鳥の湖でしたから。

 

演者について

主人公の青柳誠二(原作の誠一から変えているのは、発音のせい?)は珠城りょうさんの実直さが良く出たキャラクターで、ヒロイン高崎美波は健気で好感持てる役作り。美弥るりかさん演じる高野悠はアーティストではありますが、最も舞台に真摯で「まとも」なキャラですね。王子役を演じる世界的バレエダンサー、というには線の細さや小柄さ、個性的な持ち味が気になるところですが、それは仕様がない部分。暁千星さん演じる長谷川蒼太は劇中劇の道化役として観客にダンス力をアピール。この作品、特に際立っていたのは女性キャラクター陣で、専科の京三紗さん演じる敷島瑞穂、組長の憧花ゆりのさんの田中乃亜、ご卒業公演となった早乙女わかばさんの社長令嬢有明紗良、海乃美月さん演じたトレーナー瀬川由衣も個性的、的確ゆ配役され、良い役作りだったと思います。

 

このような、平凡なサラリーマンの成長物語、オーソドックスなよくあるハートフルなストーリーは、一定の需要があり、観客もツッコミどころがあっても受け入れやすいものだと思います。そもそも、以上に書いてきた歪みやツッコミどころも、元の原作を尊重している部分などもあるでしょう。

石田昌也先生は主にジェンダー的観点から、台詞やキャラ造形にツッコミ、批判がよく入る方ですが、今回はなんというか、原作も、そもそも古典的なオーソドックスなストーリーだしな、と思うのです…

月組の組子が総じて的確な役作りをして仕上げているのが好印象で、わたしは楽しめました。「タカラヅカらしい」作品ではないけれど、「タカラヅカらしさ」を感じる舞台でした。

 

思いの外長くなりましたので、大興奮のBADDYについては別記事でアップします!

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